◆バンクーバー五輪◆注目したい選手◆

藤本貴大選手(スピードスケート・ショートトラック)
2006年トリノ五輪に続き、2大会連続選出。500m、1000m、1500mの3種目に出場する予定

ショートトラックは1周111.12 mのトラックを、1回の競走で数名(通常4〜6人)の選手が同時に左回りに滑り、順位を競う競技です。
各組の上位2人が、予選〜決勝へと続くラウンドを勝ち進んでいきます。タイムトライアルではなく着順で優劣を決めることから、『氷上の競輪』とも呼ばれています。

今大会の競技で藤本選手が出場する競技日程は以下の予定です。
男子1500m 2月13日(土)(日本時間 翌日午前10時)
男子1000m 2月17日(水)(日本時間 翌日午前10時)
男子 500m 2月24日(水)(日本時間 翌日午前10時)

金善台(キム・サンテ)コーチ(33)は、「スタートから加速するまでの速さは、世界トップスリーです。まねようと思っても、誰も彼のスピードは出せない」と断言。

得意種目の500mで、世界一になりたい気持ちから、他の選手の倍、坂道ダッシュを反復練習。スターターの癖も見抜き、自分のリズムを合わせた。
その結果、言葉で伝えられない“何か”をつかんだという。「大げさな言い方かもしれませんが、スケート靴を靴と思っていません。
体の一部です。

前回のトリノ五輪、そして何より、あの悔しさが折れそうになる気持ちを奮い立たせた。その速さを買われ男子5000mリレー要員として代表入り。
だが、悪夢が彼を襲う。予選2組目のレース中盤、藤本は4チーム中4番手を滑走。上位2チームが決勝へ進出するため、「前へ出ろ」のコーチの指示を受け
コーナーでインから抜きにいく。しかし、転倒。起き上がりレースに戻ったが、競技後、失格の判定…。当時20歳の彼は、「申し訳ない」と泣きじゃくった。
帰国後も「無謀なレース」と酷評され、責められた。

誰にも文句を言われない、抜群のスピードを身につけるしかない。雪辱を胸に、あっという間に4年が過ぎた。
「残り2周の持久力が課題だけど、世界と戦える力をつけてきた」と金コーチ。藤本も「決勝に残るだけの力は十分あると思います。何としてもメダルを取りたい」。

○「忘れない」男泣き
代表入りを決めた男子3選手の記者会見は、途中から男泣きの場に変わった。
代表落ちした寺尾について質問が出た時。藤本が「後継者が現れるまで、渡してもらったバトンをしっかり握っていきたい」と涙ぐむと、吉沢も「ずっと寺尾先輩を追い掛けてきた。先輩の後ろ姿を絶対に忘れない」ともらい泣き。
会見を見守っていた寺尾は急きょマイクの前に呼ばれ、「気持ち良く3人を送り出せる。思い切り頑張ってほしい」とエールを送った。